グレオ物語
生い立ち(3)
金網を張るだけではだめだと気がついた彼は網の下端に横棒を取り付け、これに紐で縫うようにしてしっかりと固定したのである。
こうされるともう完全にお手上げである。私たち一家はこの物置から完全に閉め出されるはめになった。が、実はこのときちょっとしたハプニングが起きた。姉が逃げずに、隅の方にじっと隠れていたのである。そのため閉じ込められるはめになり、運よく一週間後には気づいて貰えたものの、その間姉は飲まず食わずの状態だったのである。
これ以降、私たちは近くの竹藪をねぐらにすることになった。しかし、それからというもの、何事にも積極的だった兄は近所の犬に噛み殺され、兄弟は病弱だった私とそれ以来つとに逃げ足の早くなった姉とだけになってしまった。
ここの旦那はなぜかその後も私にだけは優しかった。母や姉のいない頃を見計らっては殆んど毎日食事を出してくれたのである。匂いを嗅ぎつけた母と姉がすぐに寄ってきて大半は食ってしまうのであるが、それを見つけると、彼女たちを追い払ってくれた。私にだけ食べさせたかったようである。
私にだけ優しかった理由は、もちろん、私が可愛いらしかったからだと思う。何しろ母や姉の容姿はひどかった。姉などはサビ子と呼ばれていたのですから。可愛いらしいという点では兄も負けてはいなかったと思う。しかし、兄ではなく私だった一番の理由は、病弱だった私が寒さに凍えて死ぬ直前だったとき、ダンボール箱に入れて助けてくれたことがあったためだと思う。このときから情が移っていたのだと思う。