グレオ物語

生い立ち(1)

私は今、この家の軒先に住まわせてもらっている。正確にいえば、軒先に寝泊りしても追っ払われないということである。最近、気の毒に思ったのか、多少、情が移ってきたのか、この家の旦那がダンボールハウスを作ってくれた。ダンボール箱に私が出入りできるくらいの四角い穴を開けただけのものである。正直いって、居心地はあまり良くない。それは造作が悪いからではなく、置き場所が悪いからである。
グレオの段ボールハウス
私は生まれて間もない頃、母親に連れられて兄や姉と一緒にこの家の物置に引っ越して来た。この物置は、この家の旦那が廃材を使って日曜大工で作り上げたものである。いかにも素人づくりといった体裁のものであったが、それだけに出入りがきわめて容易で私たちには好都合のものだった。母が二、三日探し歩いた末、偶然探し当てた物置であったが、あの事件が起きるまではこの場所に一生棲んでいけるものと思っていた。しかし、人間様のこの世はそう甘いものではなかった。
私たちの両親について話そう。母はノラ、父は近所のおじさんというほかはない。父は毛に艶もあって堂々たる体格の持ち主であったが、母は頭からつま先まで真っ黒、いつもガリガリに痩せていた。あきれるほど父にメロメロで、たまに父がやってくると、怖がっている私たちを尻目にいそいそと擦り寄っていったものである。    つづき